捨てられない物たち

「すごく寒くなってきましたね。」
美容師さんのその一言から、いつものように会話が始まりました。
一年が本当にあっという間に過ぎていく、という話題になり、そこから自然と年末らしい「断捨離」の話しへと移っていきます。
「断捨離したいんですよね。」
「分かります。要らないもの、捨てたいですよね。」
使っていない部屋を片付けていたら、ベビー布団が出てきたそうです。もう必要はないけれど、捨てるには少し気が引ける。更に、人から頂いたタオルもどっさり。どうしたらいいか分からず、そのままにしているうちに、また物が増えてしまうのだとか。
「確かに、タオルって気づくと溜まっちゃいますよね。」
思わず深く頷きます。話題はそのまま、頂き物のあれこれへ。
「バッグも、どんどん溜まっていきません?」
「ええ、使わないバッグが増えて、ずっと保管したままです。」
たくさん持っているのに、なぜかトートバッグを買ってしまう。期間限定のデザインなどを見ると、つい手が伸びてしまう。捨ててしまうと、あとで必要になりそうで捨てるには踏み切れない。同じ物が簡単に手に入るわけでもないから、なおさら手放せないのです。
そんな流れで、美容師さんが次に、今朝の出来事を話してくれました。
今朝、息子さんが突然「バッグが無い!」と言い出したそうです。
「他のバッグを持って行けばいいじゃない」と言っても、「いつものじゃないと嫌だ」と聞かない。
「家に無いってどういうこと?」と、家中を探し回ることに。
その息子さんは上のお子さん。下の弟さんのことまで疑い始めたそうですが、弟さんはバッグに興味などないので、その様子にかえって驚いたのだとか。
「相当、慌てていらしたんですね。」
私がそう言うと、美容師さんは苦笑いしながら続けます。
「そうなんです。それで、バッグが無いって言ってる本人の部屋を探したら、あったんですよ。」
思わず大笑いしてしまいました。
どこにあったのかというとーーー。
柱の死角になる場所に釘を打ち、そこにバッグが掛けられていたそうです。なんと、そのバッグは「飾られて」いたのだとか。
「すごいですね!」
「そうなんですよ。飾ったことを、本人がすっかり忘れてたんです。」
ふと壁を見上げたらバッグがあって、その瞬間が可笑しくて仕方なかったそうです。外で失くしたわけではなく、本当に良かった、と笑いながら話してくれました。
「大切だから、飾ってらしたんですね。」
そんな話から、また頂き物の話題へ。
ご主人のご兄弟の奥さまから、だしパックやジャムの詰め合わせを頂いたそうです。
「福…福…」と名前が出てこなくなってみえたので、
「久世福商店ですね?」
とお伝えすると、
「そうです、そのお店!」
高級なだしパックをもらったものの、味噌汁に使うのももったいなくて、何を作ろうか迷ったまま、まだ手を付けられていないそうです。
「高級なだしパックって、使い道に悩みますよね。どうやって召し上がってますか?」
「私はお茶漬けにして食べています。」
そう答えると、
「それ、いい使い方ですね! では、シャンプー台へお願いします!」
年末らしい片付けの悩みや、朝のちょっとしたドタバタ、そして美味しいアイデアまで。
美容室で交わす何気ないお喋りはやっぱり楽しくて、自然と心が軽くなる時間です。










